Richard Mosse
The Enclave
9 1/8 x 7 1/8 inches | 240 pages, 142 four-color images | Paperback | 978-1-59711-263-5 | October 2013
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この3年間で、リチャード・モッセはコンゴ民主共和国の北部を撮影してきた。この地域は、長年にわたる権力の空白状態が恐るべき暴力のサイクル、トマス・ホッブズの言葉を借りれば「交戦状態」、つまり極めて残忍で複雑なために世界的な意識の外側で頑にとどまり、コミュニケーションを拒否するなかで終結した。
この本は、芸術的でドキュメンタリー的な方法を等しい尺度で促すことで、闘争の写真の伝統的な描写について徹底的に考え直す書籍。図版はモッセが大判のカメラで捉えたものともに、第55回ヴェネツィアビエンナーレのアイルランド・パビリオンにて出展した16mmフィルムからイメージショットを選定している。モッセは16mmとカメラの両方をもちいて、赤外線の目に見えないスペクトルに抵抗する、軍用の監視フィルムを使い、孤立したジャングルの交戦地帯と、そこに存在する深紅、ラベンダー、コバルトと暗褐色のサイケデリックな色で混乱する兵士を描写する。
16mm映像撮影をしたトレヴァー・トゥウィティーン、舞台音響のベン・フロスとのコラボレーションをしたモッセは、見た目によらず魅惑的で心を奪うようなランドスケープを捉えてきた。しかし、最終的に生じるイメージとフィルムは、暴力、混沌と言いようのない恐怖という、異質の目に見えない危機の地図を作る。モッセの見解として、プロジェクトの中心には、「ことばを超えてそれらが存在するという語り口を象徴すること、そして特有の悲劇を記録し、世界とコミュニケーションを図るという写真のキャパシティ」のために、彼自身の探究における矛盾と芸術の可能性における限界がある。
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