クウェート出身で、現在はアムステルダムを拠点とする写真家バート・ユリウス・ペータースの写真集。映し出されるものは実際よりもずっと時を経ているふうにみえ、虚構の過去の情景を描写するかのような作風で知られてる。粒子の粗いモノクロ写真の質感を生かすような感触の紙を採用し、横位置のビジュアルは中央で折って袋とじ状にしているものの、観音開きにはならない。都市部をさすらう放浪者である写真家が捉えた退廃的でおよそ閉鎖的な世界のようすを的確に表現したブックデザインともいえるだろう。独特なペースとスタイルをもつ写真家の特性に対してデザイナーが歩み寄り、両者が密接に関連したことで仕上がった1冊。
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