「わたしは被写体となる人々を利用しているのか。そもそも倫理的に戦争地帯に写真家という職業は成立し得るのだろうか。他者の無着衣の写真にわたしたちが興味を持つというのは、どういうことか。わたしが『戦争ポルノ』なるものをつくるというのは、どういうことか?」
紛争地の報道カメラマンである1978年生まれのChristoph Bangertは、常にジレンマを抱えながら撮影をしている。目の前の惨劇をありのままに写し取るべきだと思う一方で、撮影した写真は幾層かの自己検閲を通ったものでもある。一つ目は、無意識下に写真家の脳内における検閲(撮影した記憶がまるで無いものもあるとのこと)。二つ目は、世に出して良いのかという出版社の検閲。そして三つ目は、どこまで受け止め得るのかという、読者による検閲。「War Porn」ではこれらの「検閲」を外してみたとBangertは語っている。2015年ドイツ写真集賞、金賞受賞作品。
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