Thomas Mailaenderl
The Night Climbers of Cambridge
88 pages | Black velvet hardcover | 250 x 335 mm | 14 inserts, 64 tritone images | ISBN 978-0-9570490-9-3 | published July 2014
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本書は1922年に初めて英訳されたプルーストの作品を世に送り出したことで知られる一流出版社「Chatto & Windu」によって1937年に出版された。オリジナルは奇書中の奇書として知られており、著者のノエル・ハワード・サイミントンによって夜中に大学の壁をよじ登る学生たちの姿が写真ととも綴られている。壁を登るその行為自体は当時目新しいものでもなかった。かの有名なアルピニストであるジェフリー・ウィンスロップ・ヤングも壁に登った人物の一人であり、1899年に”登攀者のトリニティーへのガイド”という本を執筆している。サイミントンと彼の仲間たちが革新的であったのは、自ら壁登りをする様子を撮影していたという点である。彼らはカメラを提げて壁を登り光量不足を補うためにライトを使ったが、それは作中にも見物人として登場する警官達の注意を引いた。結果的にそれは彼ら登攀者と通行人たちが共同で演出を担う実験的かつ挑戦的なものとなり、それは当時同時期にドイツとイギリスの報道機関の間で普及していた演出された写真、ルポタージュそのものであった。参加者はほとんど互いのことも知らず、また登山やロッククライミング固有の競争優位も持たずにただ楽しみのために壁を登った。記録が残されとしても個人にとどまり、その行動や記録を統制する協会といったものも存在することはなかった。本書は作者がサイミントンの息子からオリジナルの写真を購入しAMCと共に制作・出版された初めてその写真にフォーカスした写真集作品である。印刷、修復技術の向上により写真はより鮮明になり、時代を超えたリアリティとロマンを鑑賞者に与えることに成功している。随所に挟まれた当時のオリジナルプリントを模したページも効果的に、彼ら若者たちの秘密の冒険の軌跡を辿る道しるべとなっており、歴史的価値があるだけでなく奇妙で滑稽なイギリス人の姿を巧妙に描いた1冊にまとまっている。
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