メアリー・ヘイルマンは一流のアメリカ人アーティストだが、美術界以外でも有名である典型的な例だ。1970年代よりポピュラーカルチャーや伝統的クラフトなどの要素に抽象性を織り込んだパイオニア的ペインターで、主に美術の世界で知られている。ヘイルマンのまっすぐで気ままに見える絵画手法は、美術史に関する既成概念を引っ張り出してくるようなずる賢くウィットに富んだ会話手法をことごとく裏切る。この態度は世界中のどんなアーティストにも年代を問わず目標とされるべきものだ。ヘイルマンは1970年代以降陶芸を制作に用いているが、それを絵画の表面にも使用している。このオイルペインティングと上薬をかけた粘土の組み合わせという技法は、それぞれの表面の質の違いから色の質感や奥行きの感覚が生まれ、二次元絵画の物質的な空間感を作り上げている。
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