ベルギー・ゲントとドイツ・ドュッセルドルフで開催されたトーマス・ルフの展覧会に合わせて出版された本書は、1970年代末にルフがアーティストとしてのキャリアを始動した初期作から2014年の近作まで、5つの写真シリーズによって構成される。タイトル「Lichten（＝光）」にもあらわれているとおり、このセレクションは、哲学的かつ科学的な脈絡、すなわち自然光と仮想光の間にあるスペクトルであり、過去30年を通じて写真というメディウムにおいて起こった抜本的な転換と言える。
「Interiors (1979-1983)」「Stars (1989-1992) 」「Nights (1992-1996)」をはじめ、ルフの最新作である「Negatives (2014-)」といった歴史的な様式をデジタルでシミュレーションし生み出された作品群などが選ばれている。それぞれのシリーズで、ルフは写真というメディウムに系統的解析を課しており、作品制作における社会的・政治的・審美的側面があわらになり、それによって19世紀の写真の登場によって口火を切られた近代史が紐解かれる。コンセプチュアル・フォトグラファーとして、ルフは現実を撮影することにそれほど関心がない。それよりも、写真における実情を捉えることに重点を置いているのだ。
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